【レビュー】ノーマルヘッドホン3機種聞きくらべ(Bluetoothヘッドホン実力診断番外編)~ソニー MDR-CD900ST、ゼンハイザー MOMENTUM、デノン AH-D600

デノン「AH-D600」

DENON MUSIC MANIAC 密閉型オーバーヘッドヘッドホン ケーブル着脱式 ブラック AH-D600EM

AH-D600の概要

新開発のフリーエッジ構造によるナノファイバー振動板搭載の50mm大型ドライバーにより、音楽のジャンルを問わず、高域から低域まで優れた音楽特性を発揮。着脱式のケーブルには音楽の伝送ロスを抑える高純度OFC製を採用。3.5mm変換アダプターは金メッキ加工。長時間のリスニングでも疲れにくい低反発素材による5角形イヤーパッドや、どのような頭にも常にフィットするイヤーカップを採用。

2012年からスタートしたカテゴリー「Music Maniac」シリーズのフラッグシップモデル「AH-D7100」の次点を担うハイエンドモデルが「AH-D600」。発表時は予想価格は5万円前後でしたが、現在の直販価格は39,800円。多少値下がりしましたが、価格では前回のBluetoothヘッドホン3機種や今回比較する2機種を圧倒。ところが、今現在、オンラインや店頭の実売が2万円中盤と、MOMENTUMよりも安く、BOSE AE2wやソニー MDR-10RBTと同価格帯になっている点に注目。

【関連リンク】
DENON JP | AH-D600
DENON | MUSIC MANIAC LAB.

デザインと装着感

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50mmのドライバー搭載ということもありますが、全体的に大きく、重さもそこそこあります。マイク内蔵リモコン付きのApple製品用のケーブルも標準で付属しますが、3mという長さの標準ケーブルが付属することからも、基本的には家の中でじっくり音楽と向き合うためのヘッドホンと言えそうです。

装着感は素晴らしいの一言。イヤーカップが大きいので耳が自然な形ですっぽりと覆われます。密閉感もかなりのもの。イヤーパッドは五角形シェイプでクッションには低反発素材を使用し、耳の後ろ側の凹んだ部分にもしっかりフィットするように三次元的な形状になっているそうです。

また、ぱっと見だけでわからないのがハウジング素材。GFRP(Glass Fiber Reinforced Plastic)という、プラスティックにグラスファイバーが配合された素材が使われているんだそうです。この素材が音質的に良い主な理由は、不要な振動が消えるまでのスピードが速いのだとか。

バネも柔軟で側圧も抑えめですが、その重さゆえに、耳よりも首への負担が大きく、長時間の使用はさすがに厳しいかもしれません。また、マニアな方にはリケーブル対応もうれしいところなのではないでしょうか。

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「Get Lucky」

頭の中で立体的に音楽が鳴っているかのような音場。ベースは圧倒的に重く太いが芯があるのでアタックや立ち上がりのスピードも速く、うねるラインもしっかり聞き取れる。ボーカルやクラッピング、白玉ピアノの残響感がとても自然。低音が強力だが、それでも埋もれてしまうパートが無いところがすごい。さすがに首の下には伝わらないが、口ぐらいまでは低音を感じられる。

Random Access Memories

「Christmas Eve」

解像感が非常に高く、イントロのギターアルペジオからして引き込まれる。直後のギターバッキングを含む3リズムの絡みや、強調される4拍目の残響効果が最もよくわかるヘッドホン。リズム隊は重いが芯を感じさせ、全体的な音場も広い。多重コーラスばかりが取りざたされる曲だが、バリエーション豊かなタンバリン(またはスレイベルかも)ワークがこの曲のサウンドメイクに一役買っていることがよくわかる。8ビートの曲だが所々で16を刻んだりしている。

OPUS 〜ALL TIME BEST 1975-2012〜(初回限定盤)

「木綿のハンカチーフ」

アコースティックギターとベースのボディの箱鳴りがしっかりと伝わってくるのはこのAH-D600だけかもしれない。ギターカッティングのバランス、ベースラインの動きもはっきり聞き取れる。トライアングルとウインドチャイムも艶があって美しい。ボーカルはファルセットになったときの微妙にザラッとしたハスキーな彼女特有の声質がしっかりと浮き彫りにされている。全体的に艶があってまろやか。音場の広さ、残響の度合いは他のヘッドホンには無い。

COVER 70’s

その他雑感

見た目やサイズという観点で、今回の3機種の中で最もヘッドホンらしいヘッドホンが「AH-D600」なのは間違いないでしょう。それだけでなく、実際に出てくる音もオーバーヘッドタイプのヘッドホンならではの重厚感あふれるものでした。

原音に忠実というわけでは無いのですが、原音の良さを損なわず、ツヤや奥行きを加味した豊かな音楽体験を提供してくれるなあと感じます。正直、これでハイレゾ音楽を聞いてしまうと、ワイヤレスで圧縮音源を聞くのがつらくなります。ま、家の中でじっくりという前提ですが…。

あと、オフィシャルサイトにAH-D600絡みで日野輝正氏のインタビューが掲載されていますが、「このヘッドホンはボリュームをある程度絞ってもベースの音がしっかり聴こえるのが嬉しかった」とのコメントにうなずきました。ベースもそうですが、音を絞った時に一番バランス良く全ての音域を再生できているのはAH-D600かもしれません。

それと、サイズや重さから家用と限定しがちですが、Apple製品用ケーブルは1.3mしかないので、その気になれば外に持ち出すことも可能。耳がすっぽり隠れるので、特にこれからの季節は、防寒に良いかも。

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