JVCケンウッド「Forest Notes」開発者インタビュー〜Bluetooth採用の理由とは

スピーカー

※ニュアンスが伝わるよう、実際の話し言葉を編集しています。あらかじめご了承ください。

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(柳沼氏)我々は電気製品しか作ってこなかったんですけれども、音という切り口では、音楽だけではなく、自然の音とかも楽しめるような製品があっても良いのではないかということで、音楽にこだわらず、森の音を聞くためのツールを考えました。

(小西氏)製品化を詰めていく段階で、森とつながっていることを強く感じてもらうために、今の森の音をライブ配信で、というのがまずありました。森との繋がりというところではすごく重要なポイントです。届けるためにはインターネットがありますので、それを活用したシステムで届けることにしました。

届いたもの(森の音)は、コードがつながった電気製品で聞くのではなく、見て触って森を感じられるような材料で作ったスピーカーで聞いてほしい。森の音を森で作られた木で聞く。材質、木目などナチュラルな仕上げに加え、木の香りなどを含め、五感でリアルな森を家庭で楽しんでもらいたいというのが一連の流れです。

だからこそ、無線化のための技術として、Bluetoothを選択。リチウムイオン電池内蔵のユニットを使うことで、どこからともなく、自然に音が聞こえているようなシステムになっています。

無線LANというの選択肢もありました。Forest Notesのシステムは2013年3月発売されたのですが、本格的な量産化を検討していたのは2012年夏頃です。その当時の無線LANはまだ走りで、設定の煩雑さに加え、液晶表示が必要であったり、基板が大きくなってしまうなど、最も重要な立方体デザインの中への落とし込みが難しいということがありました。

一方で、BluetoothはBluetoothスピーカーというジャンルが世の中に認知されてきまして、汎用性が高い、小型化も望める、小さなモノに入れてワンキーで操作ができるといったメリットがありましたので、このモデルではBluetoothを採用したという経緯があります。

(嶋宮氏)スマートフォンやタブレットとの親和性、オーディオではなく環境音としての空間を再現できるかというコンセプトを重視しました。ストリーミングサービスの帯域の容量制限なども影響しています。音質の追求よりも、手軽に楽しんでもらうためのシステムにするためのBluetooth採用です。

(小西氏)商品化するに当たっては、森の音だけでなく、一般的なの音楽オーディオ再生についても議論しました。我々はオーディオ専業メーカーですので、良い音を出すのはお家芸です。いまより小型化して重低音が出せるシステムを開発することも当然可能です。

ただ、今回はデザインからきて、コンセプトモデルのカタチやたたずまいをそのまま再現して、どこまで音をやれるかを考えた場合、どうしても低音域に無理がきます。低音域は音楽の要になります。低音を出す手法は持っていますが、このカタチで出す手法は今も無い状態です。

なので、良い音を聞くならコンポをお使いくださいと。これについては、森の音に特化したチューニングをして、そこではきれいな音を出そうと。でも低音や重低音が必要な音楽というモノをカットすることによって、コンセプトデザインをいかに忠実に守るかというところに力を入れています。

音楽を幅広く聴くことは決しておすすめしていません。むしろ聞かないでくださいに近いぐらいのすすめかたをしています。ユニット自体も、ユニットを納めた後も、中高域がキレイにフラットに延びてくる特性を持たせて、自然な中高音が聞こえるようなチューニングになっています。

ここの(インタビューを行った同社ホールにある)ハイレゾサウンドシステムとも通じるのですが、ここシステムは直接スピーカーのダイヤフラムから出る音を届けるのではなく、反射音を使いながら心地よい音にまとめ上げています。

Forest Notesは、ユニットからダイレクトにクリアな高解像度の音を耳に届けるのではなく、木全体を均等に振動させながら全体に広がるような音になっています。木を介在して音を届けることで、反射音的とでもいいましょうか、角の少し取られた、高解像度とは反対にいくのですが、それが自然さの方にプラスになります。材質選びや強い構造も功を奏していると考えています。

釘を使わない継ぎ留めという伝統工法を使っています。こうした木を入れることで接着面積を増やし、ヨコずれをふせぎ、がっちりくむ、100年もたす工法です。それだけがっちりしているので、2.5リットルモデルはドライバーが1面にしかないのに、反対の面までキレイに音が伝わります。

通常のスピーカーはスピーカーの前で聞きますよね。ステレオも一番良いところで聞くと定位がはっきりして臨場感も生まれます。

Forest Notesはそういう堅苦しい聞き方ではなく、部屋のどこかに置いておいて、向きも自分の気に入る向きに置いてくださいというものです。どういう向きに置いてもあまり音は変わりません。遠くに置けば音は遠くなりますが、どこから鳴っているかわからなくなるのもレイアウトフリーの面白さです。

ちなみに、森の音はマイク2本、ステレオで収録し、ステレオで配信しています。ヘッドホンで聴いていただくとステレオの臨場感が味わえます。

大きいスピーカー(YG-FA30HV)にはユニットが2つ入っていて、ステレオに対応していますが、ステレオという概念を取り払うことで、より個性のあるモノに仕立て上げられたと考えています。

また、Bluetoothユニットには2チャンネルアンプが入っていますが小さい方は1チャンネルしか使っていません。片チャンネルだけで鳴らしています。

森に設置しているマイクは30ー40センチピッチぐらいで平行につけています。マイクが無指向性で感度を上げて広くとるようにしていますので、ステレオ定位をねらったセッティングではありません。なので、右も左もとられている音はほぼほぼ同じです。

大きい方はサイズも大きいので2チャンネル鳴らすことで、パワーも大きくなって、最大の音量も上がります。そういうメリットがあって、ユニットを2つつけています。せっかく、ステレオで配信しているからステレオで入れてあげましょうということです。

ヘッドホンや他のステレオ装置で楽しむこともあろうかと思いますので、配信そのものは普通に2チャンネルでステレオで配信しておいたほうが良いと。

配信サービスとハードは分けて考えているが、Forest Notesという世界観を言うときは一体化してくるので、その辺が少しお客様にわかりにくくなっているとは思っていましたので、ハードに特化したカタログを用意したりしながら、わかりやすくするためにサイトの手直しをしているところです。

(次のページに続きます)

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